バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT:Virtual Instructor-Led Training)という考え方は古くから存在しており、決して新しい概念ではありませんが、テレワーク/リモートワークの進展により昨今急速に注目を集めています。

もちろんきっかけはCOVIC-19によるパンデミックにて人々が集まることが困難になり、実際に集まることよりもネットワーク上にコミュニティを作ることが注目されたことにありますが、パンデミック収束後の世界でも、バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT)が根付いていくことは容易に想像できるでしょう。

オンライン教育の未来

私たちは日常の生活の中で日々オンラインへの適応を進めています。先進国アメリカでは成人の50%以上の人がオンラインバンクの口座を保有しており、取引による決済の56%以上がオンラインで完結しています。2020年のソーシャルメディア利用者は2億5000万人に達し非常に多くの人が利用しています。それと同様に教育のオンライン化も急速に進んでいます。元々バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT)自体は90年代から唱えられはじめましたが、実際にはなかなか浸透することはありませんでした。ところが、パンデミックの影響により20年かけて浸透が進まなかったバーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT)が一夜にしてトレーニング業界の主役に躍り出たのです。

バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT)とは何か?

バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT:Virtual Instructor-Led Training)は、講師と学習者が別々の場所にいるときにネットワーク環境(仮想環境)を通じて実施されるトレーニングのことを指します。仮想環境と呼ばれる所以は、従来の教室内での学習や体験を近い形でシミュレーションするように設計されている点であり、単なるeラーニングとはまた異なる概念となります。単に仮想教室トレーニング(Vitrual Classroom Training:VCT)と呼ばれることもあります。

オンラインでの学習配信基盤の整備やネットワーク帯域の増強、コラボレーションソフトウェアの増加により、VILTを実現するための費用が大幅に下がってきています。多くの企業では専門能力の開発や販売スキル開発、基礎教育などを推進するためのトレーニング戦略としてVILTを取り入れるところが増えてきています。また大学でも、VILTテクノロジーをベースとしたオンラインの修士や学士課程のプログラムを提供しています。

VILTの推進にあたっては大きく考え方が2つに分かれます。ひとつはVILTでは従来の教室学習での考え方や学習体験をしっかりシミュレーションするべきであるとし、もう一方ではVILTならではの新しい独自のメソッドや考え方、オンラインならでのは学習デザインと体験を提供すべきであるとしています。

バーチャル・インストラクター主導トレーニング(VILT)の特長

仮想環境で学習することにより、今までになかった新しいやり方で教育ができるということだけでなく、新しい知識を求める側にも変化が生まれています。企業内でVILTを進めると以下のような利点が得られます。

  1. 費用対効果
    多くの企業は従業員教育に多額のトレーニング費用を負担しています。従業員はセミナーや研修プログラムに参加した際に、会社から費用負担を得られます。
    会社としてトレーニング費用の一部を都度負担していくことは、各従業員に学習コースを用意するときの費用と違い事前に見えにくい費用となり、結果として膨大の費用が発生してしまうことが懸念されます。
    VILTを導入すると、会社は従業員に必要なトレーニングを備えた全社的な学習体系に投資することになりますので、すべての従業員が必要な専門能力開発などのトレーニングに参加できるようになり、会社側としても全体のコストを抑制することが出来ます。
  2. 能力アップ
    会社にとって離職率の低下は喫緊の課題です。従業員の離職により生産性やモチベーションが低下し、新たな採用活動のための多大な費用も発生します。
    一般的に一人を採用するための活動費用としては50~60万ほどかかると言われ、採用が決定するために平均42日かかると言われています。
    VILTプログラムをしっかり組むことで、組織内の知識ギャップを埋め、従業員が仕事に従事し続けるために必要なスキルや能力を適切にトレーニングすることができます。企業が従業員の能力開発に投資するということは、従業員のモチベーションを高めることにも繋がりますので、それは巡り巡って最終的に会社に還元されることとなります。
  3. 多様性
    職場におけるダイバーシティは、従業員の学習方法や行動様式に多大な影響を与えます。VILTでは物理的な距離を問わないため、日常的にやり取りする上司や同僚などとは系統がことなる講師から新しいインプットを得ることができます。また、さまざまな専門家から特殊な能力やスキルを学ぶ機会を得ることもできますので、多様化している職場環境にも非常にマッチします。
  4. 利便性
    従業員が通勤時間や移動時間を割いて物理的に移動し、教室内でのトレーニングに参加することは非常に大きな負担となります。もちろん業務の都合によりスケジュールを合わせるのが困難になるときもあるでしょう。VILTでは、学習者はいつでもどこでも、それこそ職場でも自宅でも出張などの遠隔地でも学習環境にアクセスすることができるので柔軟な教育基盤を従業員に提示できます。柔軟なオプションがあれば従業員のトレーニングへの参加率や意欲も格段に高まります。
  5. 適応性
    VILTでの学習はオンラインで実施されますので、もし仮に学習者がしっかり理解できていないという場合でも、学習教材を一時停止して再度確認を行うことが可能になります。従業員と一言でいっても、性別も年齢も業務のバックボーンも異なる集団の集まりです。それぞれの能力に応じて適切なトレーニングを進めることが可能になります。

日本は職場のオンライン化が遅れている後進国ですので、VILTも浸透もまだまだ時間がかかるものと思われていました。ところが、COVIC-19のパンデミックにより状況は激変しています。またVILTを推進するには、機能性や可用性、使いやすさなど包括的に設計された教育プラットフォーム(LMS)が必要となりますが、LMS365などのSharePointやMicrosoft Teamsに統合された使いやすい教育プラットフォームの登場により、VILTの実現が容易になってきています。特にLMS365とMicrosoft Teamsの組み合わせでは、学習期間中のオンライン会話やチャットによるコミュニケーションや、投票やアンケートなどを通じたやり取りが簡単に行なえ、ビデオ会議によるウェビナーの開催も簡単になりました。

さらに提供される学習教材も、教室内での学習やこれまでのeラーニングとは異なり、講師と学習者が頻繁にコミュニケーションを取りながら、双方で学習教材を深堀りしていき学習者の参加度合いを強めて行く必要があります、それにもMicrosoft Teamsなどのコミュニケーションツールが有用となるでしょう。

とある研究によると、すでに世界では37%の人がVILTの学習トレーニングに参加したことがあり、30%の企業が何らかの形でVILT戦略に基づいた仮想トレーニングを推進しているとの報告もあります。

最後に、VILTを実装し成功に導く鍵は以下の3点となります。

  • 人事戦略に即し、VILTに準拠した質の高い学習プラットフォームに投資する
  • 従業員の声に耳を傾け、コミュニケーションを取りながら教育環境を整備する
  • 企業文化の変革を続け、トップダウンで学びの場を作り上げていく