クラウド移行によるセキュリティリスクとトレーニング


コロナ禍における世界的なパンデミックの影響で苦境に立たされている業界がある一方で、順調に業績を伸ばしている業界もあります。在宅勤務/リモートワークへの大きなシフトに伴い、クラウド業界では個人消費者およびビジネス双方からの需要が急増しています。特に企業ではパンデミック以降、クラウドサービスへの移行が急速に進んでいます。

企業がクラウドを正しく活用していくためには、セキュリティ面やスキル面など様々なトレーニングを従業員に行っていく必要があります。クラウドへの移行は一度限りのアクティビティではありませんので、企業としては他にも継続的に実施していかなければならないことが山積みでしょう。

クラウド利用に伴うリスク

欧米などと比較すると、日本でのクラウド導入はまだまだ遅れをとっています。これには様々な要因が考えられますが、セキュリティへの懸念も大きな理由となっています。日本ではまだまだ残るオンプレミス信仰があります。サーバーを自社の手元で管理することが最も安全であると考えている人が多いことも事実です。

しかし、サイバーセキュリティの進化は日進月歩です。一般の企業にとってプロのサイバー集団と渡り合うことは容易ではありません。セキュリティに特化した人材を確保し、日々更新される様々なセキュリティ情報を常に教育し、専門のクラウド事業者と同等以上のセキュリティを自前で確保することは、もはや現実的ではなくなってきています。

Bain&Company社は2020年以降、ヨーロッパでのパブリッククラウド市場が年間21%成長するだろうと予測しています。ヨーロッパでは大規模なデータセンターを構築するクラウド事業者が増えてきています。ヨーロッパではGDPRの施行に伴いクラウド事業者への信頼は増していますが、それでもセキュリティへの懸念が完全に払拭されているわけではありません。

そのため、多くの企業がGoogleやMicrosoftなどの主要クラウド事業者を活用して、セキュリティの他、ストレージ保護や設備メンテナンスなどの責任から開放され、リスク低減を行っています。自前でセキュリティの高い人材や設備を用意するのではなく、専門の事業者に委託することでリスクを極力回避する傾向にあります。

ただし、それでもセキュリティリスクが完全に消えてなくなるわけではありません。従業員は多くの機密情報にアクセスできますが、情報を安全に保ち運用していくために必要な知識を全従業員がしっかり備えているわけではありません。
どんなに機械的にセキュリティを高くしても、多くの従業員が知識不足のために情報を誤って扱ってしまうことがあります。多くの情報漏えいは外部からの攻撃によって起こるわけではなく、社内での誤ったデータ運用によります。そのため企業としては従業員へのセキュリティトレーニングが常に優先事項となっています。

クラウドに対する知識ギャップがリスクを増大させる

企業は、クラウドシステムを正しく利用するための知識には依然としてギャップを抱えています。従来のセキュリティに関する知識やスキル、ノウハウなどの多くはクラウドテクノロジーにも移行することが可能ですが、それだけでは正しく、かつ安全にクラウドテクノロジーを運用することは難しく、またクラウドサービスの恩恵としての効率化や生産性向上を享受することも困難となります。

最近の調査によると、プロジェクトリーダーの86%がクラウドテクノロジーに関する従業員の理解不足によってプロジェクトの品質や生産性が低下してしまうと懸念しています。特にセキュリティ面での十分以上の対策は業務効率を阻害する要因となります。例えばある企業では情報漏えいの観点からパソコン上の画面キャプチャを撮ることを機能的に制限していました。そこで従業員は画面キャプチャを撮る代わりに、自分のスマートフォンを使ってパソコン上の画面を撮影し、スマートフォンから自分のメールアドレスに送信していました。このような対策はセキュリティ面では何ら有効な手段でないばかりか、業務効率を著しく低下させる要因となります。

クラウドテクノロジーやセキュリティに関する正しい知識を従業員に伝え、様々なクラウドサービスを活用してビジネスに役立てるようにすることが、セキュリティの向上にも繋がります。

トレーニングに必要な環境の整備

企業がクラウドテクノロジーの知識不足に対処する一番の方法は、最適な学習プラットフォームを整備することです。学習プラットフォームを通じて、知識やベストプラクティスを含む様々な関連情報を従業員に簡単かつ迅速に伝えていくことが可能となります。

もちろん実地の研修も有効です。ただし、様々な情報がデータ化され、オンラインで繋がり、日々目まぐるしくテクノロジーが進化していく現在において、必要なスキルや知識をリアルタイムに従業員に伝えていくためには、実地研修だけでは間に合わないのも事実です。

特に、クラウドへの移行「クラウドジャーニー」は一度きりで済むものではなく、継続して行われ、それには複数のフェーズやステップが存在します。従業員へのトレーニングも継続的に、かつ迅速に行う必要があり、当然それらのトレーニングはリモートでも実施できる必要が出てきます。

特にソーシャルラーニングが可能な学習プラットフォームを採用することで、従業員は様々なアイデアや情報を交換でき、常にスキルや知識を最新に保つことが可能となります。
このようなプラットフォームは、学習環境への柔軟なアクセスを提供し、学習中にも同僚とコミュニケーションを取ることができるようになり、関連する質問や情報を共有する機能を備えています。これは適切な環境がない状態では非常に困難な、協創的学習カルチャーの構築にも最適です。正しい学ぶ姿というのは、一方的に企業から与えられる情報を覚えるだけではなく、従業員が双方向に意見を出し合い、ともに考え学んでいく、まさに協創的な姿理想とされています。

学習プラットフォームを活用するもう一つのメリットは、遠隔地やタイムゾーンが異なるグローバル環境でも、従業員同士がともに繋がり学び合える場を作り上げることができることです。従業員は同じプラットフォーム上でお互いに学び合い、対話し、必要に応じて助け合うこともできます。

これ以上拡大が難しい国内市場の中では、企業は国境を超えたビジネス活動が必然となってきています。そうした環境の中でも、全従業員が正しくスキルや知識を身につけ、セキュリティ面の順守はもちろんのこと、ビジネスに活かしていくためには、学習プラットフォームの整備を抜いては語れません。

クラウド化の成功要因はオンライン学習にある

パンデミックが引き金となり、これまで以上にクラウドサービスの重要性が増してきており、企業での採用も急速に進んでいます。
ただし、このような急速なクラウド化は、当然ながらクラウドセキュリティに対する知識ギャップを顕在化させます。企業としてはいち早く、それらの知識ギャップを埋めるためのトレーニングを従業員に提供し、クラウド化に伴って起こり得る問題を未然に防ぐ必要があります。

グローバルでは驚くべきスピードでリモートワークが進んでおり、オンライン上の学習環境はもはや必然のものとなってきています。日本でもパンデミック以降、在宅勤務/リモートワークが急速に進みましたが、この流れは今後より一層加速することでしょう。学習プラットフォームは従業員トレーニングのための簡単な配信環境であり、従業員が基本的なセキュリティ知識からクラウドサービスの活用まで幅広い知識とスキルを習得するための重要な学習ポータル環境を提供します。

一元化された学習ポータル環境は、従業員がお互いに学び合いながら協力し、励まし合い、交流するのにも役立つことから、クラウドテクノロジーを社内に浸透させるための必須の成功要因になってくるものと思われます。

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