企業内でのハラスメント問題は、近年深刻な社会問題として取り上げられています。
性別や人種、年齢、障がいの有無などによって発生する差別的な言動や行為は、被害者にとって深刻な影響を与えるばかりか、その影響は企業にも及び、業務に支障をきたすこともあります。
こうした問題に対して、企業にできる取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では、ハラスメントの種類や原因、対策の必要性などについて解説します。
対策が必須なハラスメントの種類とは?
職場でのハラスメントは、その影響が被害者だけでなく組織全体に及ぶことから、重大な社会問題として認識されています。
ハラスメントには様々な種類があります。ハラスメントは、それぞれ背景や特徴が異なりますが、いずれにしても被害者に大きなストレスや苦痛を与え、職場環境を悪化させるものであることは変わりません。
まずは、ハラスメントにはどのような種類があるのかをご紹介いたします。
種類①:セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、性的な言動や行動、嫌がらせをすることで、相手を不快にさせたり、不利益を与えたりすることです。
言葉やジェスチャー、視線などで行われる「言葉によるセクハラ」と、体の一部を触る、抱きつく、キスするなどの「身体によるセクハラ」があります。また、セクハラは単発的なものだけでなく、繰り返されることもあります。被害者は、セクハラによって仕事や学業に支障をきたし、心身ともにダメージを受けることがあります。
セクハラは、加害者にその意識がなくとも、被害者にとっては深刻な問題です。そのため、組織や個人がセクハラを認知し、防止するための取り組みが必要です。
種類②:パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)とは、職場や学校などの組織内で、上司や先輩などの地位や権限を利用して、部下や後輩などに対して不当な要求や扱いをすることを指します。
上司や先輩から部下や後輩に対してのみ行われるわけではなく、同僚同士や取引先など関係のある人物間で発生する場合もあります。
具体的なパワハラの例として、業務上の指示を理不尽に変更する、業務上必要のない時間外の業務を指示する、業務上必要のない連絡を無理やり続ける、業務上必要のない権力を行使する、権限の乱用などが挙げられます。
種類③:モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)とは、職場や学校などの組織内で、相手を傷つけたり不快な思いをさせたりする言動や態度をとることを指します。パワーハラスメントとは異なり、モラハラの加害者と被害者の間には権力関係がないことが一般的です。
モラハラの具体的な行為には、無視や拒絶、侮辱や中傷、嫌がらせやいじめ、陰口や噂話などがあります。モラハラは、被害者にストレスや不安感を与え、心身の健康を損なうことがあります。
被害者は、自尊心や自信を失い、社交性や対人能力を落とすことがあります。
種類④:アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、飲み会や接待などでアルコールを飲むことが原因で、相手に対して嫌がらせを行う行為のことを指します。
アルコールの影響によって、判断力や自制心が低下し、言動が過激化したり、相手に対して不適切な行為を行ったりすることがあります。
アルハラの例としては、相手を無理に飲ませ、酔いつぶしてからいじめやセクハラ行為をする等が挙げられます。
アルハラは、被害者にとっては精神的・身体的なダメージを与えることがあるため、組織や個人がアルハラを未然に防止するための対策が求められています。
種類⑤:アカデミックハラスメント(アカハラ)
アカデミックハラスメント(アカハラ)とは、大学や研究機関などの学術界で起こる、上位者や先輩からのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの行為を指します。
具体的には、研究成果の盗用や無断転用、先輩や上司からのパワーハラスメント、発言の無視や過剰な批判、性的な言動や暴力、評価や賃金の不当な差別などが挙げられます。
これらの行為は被害者の心身の健康やキャリアに大きな悪影響を与え、社会的な問題となっています。
近年、アカハラを取り締まるためのガイドラインの整備や、報告窓口の設置など、対策が進められていますが、未だに改善が必要な状況が残っています。
種類⑥:マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠・出産・育児に関する状況を理由に、女性に対して不適切な言動や行為を行うことを指します。
例えば、妊娠中の女性に対して仕事を減らしたり、昇進の機会を与えたりしないなど、職場での差別的な扱いが挙げられます。
また、出産後の女性に対し、育児休暇を取得することを妨げたり、仕事復帰時に不当な条件を提示したりするなどの扱いもマタハラに含まれます。
マタハラは、女性の職場でのキャリアアップを妨げることになり、経済的な損失やメンタルヘルスに悪影響を与えることがあります。
種類⑦:ケアハラスメント(ケアハラ)
ケアハラスメント(ケアハラ)とは、介護をしながら働く労働者に対して、介護休業や介護時短制度などの制度利用を妨害する行為を指します。
また、介護を理由に人事評価を下げ、パートへの降格や解雇をする行為も含まれます。
具体的な言動の例としては、「定時で帰る社員に対して『定時で帰れていいよな』と発言する」、「介護を理由に降格処分を下す」などが挙げられます。介護と仕事を両立することが困難な状況にある労働者に対して、理解や配慮が必要であることを企業は認識する必要があります。
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ハラスメント対策が必須な4つの理由
現代社会において、ハラスメントは深刻な社会問題となっています。多くの企業がハラスメント対策を進めていますが、なぜハラスメント対策が必須となったのでしょうか。
ハラスメント対策がなぜ企業にとって重要かを詳しく解説いたします。
理由①:社会問題
ハラスメントは社会問題として取り上げられ、被害者の心身の健康に深刻な影響を与えるだけでなく、その影響が会社の業績や労働生産性にも及ぶことが知られています。
また、ハラスメントによって労働者が離職することによる、雇用の流動性や長期的な労働力不足の問題も発生しています。
ハラスメントは、被害者のメンタルヘルスや身体的健康を損なうだけでなく、仕事の効率性や生産性を低下させ、企業や組織のイメージを損ねることもあります。
このため、ハラスメント対策に取り組むことで、企業イメージの向上が期待できるという側面もあります。
理由②:ハラスメント対策の義務化
企業においては、ハラスメントを防止し、解決するための対策が義務化されています。
2020年6月から大企業を対象に「改正労働施策総合推進法」いわゆる「パワーハラスメント防止法」が制定されました。2022年4月からは、中小企業に対してもパワハラ防止法が施行され、すべての企業においてハラスメントの予防と解決が義務化されました。
具体的に罰則規定はないものの、適切な対策を講じない企業には、企業名公表や勧告などの行政指導が行われることになっています。
理由③:ハラスメント発生時のリスク
ハラスメント対策が必要な理由として、コンプライアンスの重要性の高まりや、発生時の評判の低下なども挙げられます。
ハラスメント事案が発生すると、会社全体の社会的評判の低下につながるため、ブランドイメージの損失や採用難にも影響を与える可能性があります。
また、IT機器の普及により、被害者が証拠を集めやすくなっており、企業側が隠蔽することは困難になっています。
訴訟や示談交渉などのトラブルによって、企業イメージの悪化や経済的な損失を招く可能性もあります。ハラスメントは一人の被害者だけでなく、企業全体に悪影響を及ぼすことがあるため、徹底的な対策が必要です。
理由④:働き方の変化
最近の働き方の変化も、ハラスメント対策が必要な理由の1つです。
テレワークやリモートワークなどが急速に普及したことで、多くの企業においてハラスメント対策の教育体制を整えることができておらず、教育が十分に進んでいないのが現状です。
また、コミュニケーションがオンライン上で行われるようになり、個別のコミュニケーションが周囲から見えにくくなることにより、セクハラやモラハラなどの発生が懸念されています。
関連記事:テレワークにおける人材育成の課題とは?LMSを用いた解決方法も解説
ハラスメントが起こる原因
ハラスメントの背景には様々な原因があり、複数の要因が相互に影響し合ってハラスメントを引き起こすことがあります。
ハラスメントを防止するには、それぞれの原因に対する対策だけではなく、総合的な対策が必要とされます。
ここでは、ハラスメントが起こる原因について詳しく見ていきましょう。
性格や経験などの個人の要因
ハラスメントが起こる原因のひとつに、個人の性格や経験が含まれます。
攻撃的な性格や、自分自身に対するコントロールが不十分な人が、他人に対してハラスメントを行う場合などが挙げられます。
また、元々攻撃的な性格の人でなくても、過去にハラスメントを受けた経験がある場合は、ハラスメントにあたる言動に慣れてしまい、同様の行為を他社に対して行う加害者となる可能性があります。
組織の体質
組織の体質によってハラスメントが起こる原因となる場合があります。
例えば、厳しいノルマが課せられている場合や、人手不足による長時間労働で日常的に強いストレスにさらされる職場だと、ストレスの捌け口として部下や同僚に対するハラスメント行為が発生するリスクが高まります。
また、ハラスメントは第三者の視線があることで未然に抑止することができますが、職場環境が閉鎖的な場合は、相談先がなく被害者が抱え込んでしまう恐れがあります。
ハラスメント対策の教育が不十分
ハラスメント対策の教育が不十分であることが、ハラスメント発生の原因となることがあります。
適切な教育がなければ、ハラスメントの定義や、どのような行為が問題となるのか、また、どのように対処するべきかについての知識や理解が不十分であるため、ハラスメントを防止することができません。
また、ハラスメント対策の教育が十分でない場合、従業員が自らの行動がハラスメントに当たる可能性があることに気づくことができず、意図せずハラスメントを引き起こすことがあります。
このため、定期的な教育を実施し、従業員がハラスメントの問題点や相談先、対応方法を正しく理解することが重要です。また、教育は従業員だけでなく、管理職や人事担当者にも行うことで、上層部からの指導やサポートも受けられる環境を整えることができます。
ハラスメント対策にLMSを活用するメリット
LMSは、ハラスメント対策の教育にも活用されることがあります。
オンラインで学習することによって、従業員が自分のペースで学ぶことができ、学習内容を理解しやすくなるというメリットがあります。
最後に、ハラスメント対策にLMSを活用するメリットについてご説明いたします。
LMSとは?
LMS(Learning Management System)とは、教育やトレーニングのためのオンラインプラットフォームです。主に企業や学校、団体などで使用され、e-learningとして知られることもあります。
LMSには製品によってさまざまな機能が搭載されています。代表的な機能としては、教材の配信、学習の進捗管理、テストや評価、コミュニケーションなどが挙げられます。
LMSを活用した人材教育は、従来の対面式の教育に比べて柔軟性が高く、コスト削減や時間効率の向上が期待できます。
最新のハラスメント事例を教材にできる
LMSを利用することで、最新のハラスメント事例を簡単に教材にすることができます。
LMSは、オンライン上での学習や教育に適したシステムであり、動画や文章、音声、画像などの多彩なコンテンツを組み合わせて教材を作成することができます。
そのため、最新のハラスメント事例を取り入れたリアルな教材を作成し、従業員に提供することが可能です。
最新のハラスメント事例を教材にすることで、従業員の認識を高めることができ、ハラスメント対策の効果を高めることができます。
関連記事:eラーニングシステムの教材を使用・制作する際の注意点やポイントを紹介
テスト機能を用いて理解度を管理できる
LMSは、テスト機能を備えていることが多く、従業員が学習した内容について理解度を測定することができます。
ハラスメント対策においても、学習した内容をテストで確認することで、従業員がどの程度理解しているかを把握することができます。
教材と同じく、テスト問題も簡単に修正・追加することができるため、常に最新事例を題材にしたテストを行うことも可能です。
また、アンケート機能が搭載されているツールもあります。
アンケート機能を使えば、匿名でハラスメント事案に対するヒアリングを行うことができ、ハラスメント発生時の迅速な対応にも繋がります。
関連記事:eラーニングシステムを活用したテスト実施事例を紹介。機能やメリットも解説
情報の共有・コミュニケーションが容易にできる
LMSを利用することで、情報の共有やコミュニケーションが容易にできます。従来のハラスメント対策では、対面での集合研修教育が一般的でしたが、LMSを導入することで、オンラインで教材を提供し、社員が自分のペースで学習することができます。
また、コースやトレーニングの進捗状況を共有でき、適宜アドバイスを受けることも可能です。
Microsoft Teams上で利用できるLMSである「LMS365」は、普段Teamsで情報共有する方法と同じように気軽な情報発信が可能です。
例えば、他社で起きたハラスメントの最新事例などを掲示板に投稿し、既読したらスタンプを押すなど、独自のルールを設けることにより、ハラスメントに対する意識を常に持たせることが可能になります。
ハラスメント対策にLMSの活用を検討しよう
ハラスメントは、組織の体質に起因する原因の一つであり、対策が必要とされています。
ハラスメント事案が発生すると、会社全体の社会的評判の低下につながるため、ブランドイメージの損失や人材採用にも影響を与える可能性があります。
ハラスメント対策に力を入れることによって労働者の離職防止や、企業イメージ向上を期待することもできます。
ハラスメント対策として企業に求められる取り組みとしては、相談窓口の設置などの体制強化のほか、教育を通じた職場の意識改革などがあります。
ハラスメント教育の効率化を行ううえでは、LMS(Learning Management System)が注目されています。
LMSを活用してハラスメント教育を行えば、動画やテキストなどを組み合わせた教材を使って、従業員が自分のペースで学習することが可能です。
進捗状況の管理や学習内容のアンケート結果に基づく改善提案など、従業員の学習状況を把握し、効果的な社員教育を実施することができます。
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